昔を懐かしむ。
誰でもあることだと思う。
私が思うノスタルジーとは、
細かい部分まではっきりと覚えているよりも、
曖昧な部分がある少しぼんやりした記憶のほうが
より懐かしさとか切なさが増すような気がする。
仙台に住んでいない人にはたぶんどうでもいいことだと思うのだけど、
2月下旬に昔からあったデパートがつぶれてしまった。
前日普通にお買い物に行ったのに、翌日はシャッターが閉まったままというような
突然のことだった。
私が生まれる前からあり、
子供の頃、夜になるとそのデパートから音楽が流れた。
「この道」
これが聞こえると、もう寝なくちゃと思ったものだった。
先日、オットとお散歩していて思いがけず
このつぶれてしまったデパートの回顧展に遭遇した。
規模は小さいけれど、夜に音楽を流したことなども紹介されており、
私は何かを探すかのように写真や説明を読んでいた。
その時会場からあの音が聞こえてきたのだ。
「この道」
とても優しいその音は私の記憶のままで、
その音を認識するのと同時くらいに込み上げてくるものがあった。
おぼろげな記憶だった音に対する懐かしい気持ちと、
突然無くなってしまったデパート、
顔なじみになっていた店員さんはどうしているかなど、
いろいろな感情が混ざっているのだけれど、
私にとっての別れの儀式だったことにしようと思っている。
写真はブリスベンの古い建物。
本文とは関係ないけれど。なんとなく気分にあっている。